MEL(マリン・エコラベル・ジャパン)とは?水産エコラベル認証の仕組みとビジネスでの意味を解説

mel マリン・エコラベル・ジャパン ビジネス用語

取引先から届いた商品カタログ、サステナビリティレポート、あるいは自社の調達基準を定めた資料の中に「MEL」という三文字を見かけて、手が止まった経験はないでしょうか。文脈からすると何かの認証マークらしい。しかし「MEL」で検索しても英単語や別の話題ばかりが出てきて、正体がつかめない。MELとは、日本発の水産エコラベル認証制度「マリン・エコラベル・ジャパン」の略称です。本記事では、この制度の仕組み、3つの認証区分、取得の流れと費用、そしてビジネスの現場でMELがどのような意味を持つのかを整理して解説します。

MEL(マリン・エコラベル・ジャパン)とは

MELは、水産資源の持続性と環境への配慮を第三者が審査し、基準を満たした水産物にロゴマークを付与する認証制度です。「持続可能な形で獲られた・育てられた魚である」ということを、消費者や取引先に対して客観的に示すための仕組みだと考えると理解しやすくなります。

正式名称と読み方

制度の正式名称は「マリン・エコラベル・ジャパン」、英語名称は Marine Eco-Label Japan です。その頭文字を取った略称が MEL(メル) で、業界内でもほぼこの略称で呼ばれます。

対象となるのは漁業・養殖業といった生産段階の事業者だけではありません。認証された水産物を仕入れて加工・流通させる事業者も、ロゴマークを商品に表示するためには別途認証を受ける必要があります。つまりMELは「獲る側」から「売る側」までを一本の線でつなぐ設計になっています。

項目 内容
制度の名称 マリン・エコラベル・ジャパン
英語名称 Marine Eco-Label Japan
略称 MEL(メル)
制度の運営者 一般社団法人マリン・エコラベル・ジャパン協議会
運営者の英語名称 Marine Eco-Label Japan Council
認証の区分 漁業/養殖/流通加工段階(CoC)の3種類

運営主体は「MEL協議会」

制度を運営するスキームオーナーは、一般社団法人マリン・エコラベル・ジャパン協議会(略称:一般社団法人MEL協議会)です。2016年12月2日に設立された法人で、事務所は東京都千代田区内幸町に置かれています。

重要なのは、MEL協議会自身が審査を行っているわけではないという点です。協議会は認証規格や判定基準を作る立場に徹し、実際の審査は独立した「認証機関」が担当します。さらにその認証機関の能力を評価する「認定機関」として、公益財団法人日本適合性認定協会(JAB)が位置づけられています。JABは国際認定機関フォーラム(IAF)に加盟しており、認証機関はISO 17065に基づく認定を受ける必要があります。

規格を作る主体・審査する主体・審査能力を認定する主体が分離されている、この三層構造こそが「第三者認証」の実質です。認証マークの信頼性を評価する際には、運営団体の知名度よりもこの構造が確保されているかを見るのが実務的な視点になります。

ロゴマークが示す意味

MELのロゴマークは、アルファベットの「e」を魚の形で表現した黄色いマークです。このマークが付いた商品は、生産から流通・加工までの各段階で認証を受けた水産物であることを意味します。

なお、ロゴマークは認証を取得すれば自由に使えるわけではありません。認証事業者はロゴマーク使用契約を締結したうえで、事業規模に応じた定額の使用許諾料(事務手続き費用)を支払う仕組みになっています。教育団体やメディアが制度紹介の目的で使用する場合も、協議会への使用許諾申請が必要です。マーケティング担当者が自社サイトや販促物に他社の認証マークを掲載する際は、この点を見落とさないよう注意が必要です。

MEL認証が生まれた背景

MELがなぜ日本で生まれたのかを知ると、この制度がビジネス文脈で語られる理由も見えてきます。

FAOガイドラインが出発点

きっかけは国際機関の動きでした。国連食糧農業機関(FAO)が2005年3月にローマで「水産エコラベルのためのガイドライン」を採択したことを受け、日本でも同様の仕組みを整備する機運が高まります。FAOはその後、2011年に養殖業と内水面漁業についてもガイドラインを策定しました。

背景にあるのは水産資源の逼迫です。FAOの「世界漁業・養殖業白書 2020年」では、世界の水産資源の34.2%が獲りすぎの状態にあると報告されています。水産物を扱う企業にとって、資源の持続性はCSRの話であると同時に、原料調達の継続性という事業リスクの話でもあります。

2007年の発足から2016年の法人化へ

MELの源流は、FAOガイドライン採択を受けて2007年に大日本水産会の事業として発足した「マリン・エコラベル・ジャパン」です。当初は業界団体内の一事業という位置づけでした。

転機となったのが2016年です。4年後に控えた東京オリンピック・パラリンピックで使用する日本産の持続可能な食材を確保すること、そして水産物の輸出を促進することを狙いとして、「国際標準化を実現する」という使命のもとで一般社団法人MEL協議会が設立され、事業を引き継ぎました。同時に、透明性と公平性を確保するための制度改革も行われています。

国の政策とSDGsに組み込まれた

2017年に策定された「水産基本計画」には水産エコラベルの推進が明記され、MELは日本の水産政策の一端を担う存在となりました。水産庁も国際水準の水産エコラベルの普及推進を支援しています。

また東京2020大会の「持続可能性に配慮した調達コード」では、MEL・MSC・AEL・ASCの認証を受けた水産物が推奨対象とされました。大規模イベントの調達基準に認証名が具体的に書き込まれたことは、企業の調達実務にとって大きな意味を持ちました。MELは「海の豊かさを守ろう」「つくる責任つかう責任」といったSDGsの目標達成に資する仕組みとしても位置づけられています。

MEL認証の3つの種類と要件

MEL認証は、生産段階(漁業)・生産段階(養殖)・流通加工段階(CoC)の3種類で構成されています。生産段階のどちらかを取得しただけでは商品にロゴマークを表示できず、流通加工段階の認証と組み合わせて初めて消費者の手元まで届く形になります。必要に応じて生産段階と流通加工段階を一括して申請することも可能です。

漁業認証

天然の水産物を対象とする認証です。FAOガイドラインに準拠し、次の3つの要件で構成されています。

  • 確立された管理体制のもとで漁業が行われていること
  • 対象資源が持続的に利用される水準を維持していること
  • 生態系の保全に適切な措置がとられていること

MEL漁業認証の特徴は、日本の漁業の実態を反映している点にあります。小規模事業者の割合が高いこと、地域共同体が山林や農地、河川まで含めて統合的に資源を管理してきた歴史的・伝統的な経緯を踏まえたうえで、科学的根拠に基づいて評価する設計になっています。資源管理に関する法制度、行政による計画、各地域の自主的な取組の三者がそれぞれ有効に機能しているかを見ます。

養殖認証

養殖業を対象とする認証で、こちらは4つの要件から成ります。

  • 養殖生産活動において社会的責任を着実に果たすこと
  • 対象水産生物の健康と福祉に配慮すること
  • 食品安全が確保されること
  • 環境保全への配慮がなされていること

漁業認証と比べて特徴的なのは、アニマルウェルフェア(動物福祉)の考え方が明示的に組み込まれていることです。また養殖では飼餌料を使用するため、その原料や調達経路のトレーサビリティ、投薬管理、食品安全の観点からの管理も求められます。労働環境・衛生・安全の管理も評価対象に含まれます。

流通加工段階(CoC)認証

CoCはChain of Custody(管理の連鎖)の略で、認証水産物が非認証の水産物と混ざらないことを担保するための認証です。認証を受けた水産物が、そのまま、あるいは加工されて店頭に並ぶまで、または外食を通じて顧客に提供されるまでの過程を対象とします。

要件は次の4つです。

  1. 申請者の資格に関する要件
  2. 管理体制に関する一般的要件
  3. 仕分けおよびトレーサビリティを確立するための要件
  4. ロゴマークの管理に関する要件

流通・販売の業態には単独1店舗のケースもあれば、チェーンストアやフランチャイズのように複数拠点を持つケースもあります。そのため規格はシングルサイトとマルチサイトA・B・Cにタイプ分けされており、事業形態に応じて適用されます。小売や外食を営む企業が関わるのは、多くの場合このCoC認証です。

3種類の比較

項目 漁業認証 養殖認証 流通加工段階(CoC)認証
対象 天然水産物の漁業 養殖業 認証水産物を扱う流通・加工事業者
要件の数 3要件 4要件 4要件
特徴的な観点 資源管理・生態系保全 アニマルウェルフェア・食品安全 混入防止・トレーサビリティ
認証の有効期間 5年間 3年間 3年間
年次監査 1年ごと 1年ごと 1年ごと
更新審査 5年ごと 3年ごと 3年ごと

有効期間が漁業のみ5年間で、養殖とCoCは3年間である点は実務上見落とされやすい違いです。いずれの区分でも1年ごとの年次監査があるため、認証は「取ったら終わり」ではなく継続的な運用が前提になります。

MEL認証を取得するメリット

消費者にとってのメリット

消費者にとっての最大の価値は、判断コストが下がることです。ある魚がどのように獲られ、育てられたかを一人ひとりが調べるのは現実的ではありません。ロゴマークが付いていることで、資源や環境に配慮した商品であることが売場で一目で分かります。日々の買い物の中で環境保全に参加できる、という参加感も提供しています。

事業者・企業にとってのメリット

事業者側のメリットは、大きく3つの層に分けて整理できます。

1つ目は、取引条件としての価値です。 前述の東京2020調達コードのように、大規模イベントや企業の調達基準に認証取得が要件として書き込まれるケースが出てきています。認証を持っていないことが商談のテーブルに着けない理由になる場面が、今後増える可能性があります。BtoBの文脈では、MELは「アピール材料」よりも先に「参加資格」として機能し始めていると捉えるべきでしょう。

2つ目は、ブランディングと差別化です。 水産物はコモディティ化しやすく、価格競争に陥りやすい商材です。認証マークは、品質や産地といった説明の難しい価値を、第三者のお墨付きという形で可視化してくれます。

3つ目は、ESG・サステナビリティ開示との接続です。 統合報告書やサステナビリティレポートで自社のサプライチェーンの持続可能性を説明する際、認証の取得状況は定量的に示しやすい指標になります。特にCoC認証はトレーサビリティの確保が要件に含まれているため、「サプライチェーンの透明化」という開示テーマと直接結びつきます。

MEL協議会は、認証を「生産と消費を結ぶ究極のトレーサビリティ」であり、事業者にとって社会的信頼や評価を高めるツールであると位置づけています。収益面では、認証によって取引先や消費者が増えれば増益につながり、その原資をさらに環境配慮型の漁業・養殖業の取組に振り向けられる、という循環が想定されています。

MEL認証取得までの流れと費用

審査の内容

申請を受けた認証機関では、認証機関が認めた審査員が、認証基準に適合しているか、実際に取組が行われているかを審査します。その結果は審査報告書にまとめられ、判定委員会で審議されます。

ここで押さえておきたいのが、審査員が判定に関与することは禁じられているという点です。審査する人と合否を決める人を分けることで、審査の公正性を担保する設計になっています。

現在MELの審査を行う認証機関としては、公益社団法人日本水産資源保護協会(JFRCA)と公益財団法人海洋生物環境研究所(海生研)が登録されています。申請の申し込みや費用の見積もりは、協議会ではなくこれらの認証機関へ直接行う流れです。

必要な手続き

認証取得までの手続きは、おおむね次の6ステップで進みます。

  1. 審査契約の締結
  2. 書面審査
  3. 現地審査
  4. 認証の判定
  5. 認証の登録・証明証の発行
  6. ロゴマークの使用契約

書面審査・現地審査に通らなかった場合は再審査となります。MEL協議会は、申請前に認証基準と照らし合わせた自己チェックを行うことで時間と経費の節約になると案内しており、自己チェックシートも公開されています。準備不足のまま審査に臨んで再審査になれば、その分だけ時間もコストも膨らむということです。

かかる費用の目安

審査費用は認証機関によって異なりますが、大日本水産会が2023年2月に発行した「認証取得のためのガイド 第4版」では、初回審査の目安が次のように示されています。

認証の種類 初回審査費用の目安
漁業認証 85万円〜
養殖認証 70万円〜
流通加工段階(CoC)認証 35万円〜

いずれも審査サイト1カ所の場合の基本料金です。複数拠点を持つ事業者では当然これより増えると考えられます。またこれは初回のみの費用であり、取得後の年次審査や数年に一度の更新審査でも別途費用が発生します。加えて、前述のロゴマーク使用許諾料も事業規模に応じて必要になります。

もっとも、MEL協議会は中小規模の漁業者・加工業者が多いという日本の実情を踏まえ、認証取得にかかる経済的負担をできる限り抑制することを自らの使命の一つに掲げています。金額はあくまで目安であり、実際の見積もりは認証機関への個別相談が前提となる点には留意が必要です。

MSC・ASCなど他の水産エコラベルとの違い

「水産エコラベル」と一口に言っても、世界には140ほどの認証が存在するとされます。ビジネスの現場で混同されやすい主要なものを整理しておきます。

MSC認証・ASC認証との関係

MSC認証は、1990年代の乱獲問題を背景に、1997年に国際非営利団体である海洋管理協議会(Marine Stewardship Council)が始めた認証で、天然の水産物を対象とします。「海のエコラベル」の通称で知られています。ASC認証は養殖の水産物を対象とする認証です。

つまりMSCとASCは対象領域ごとに別々の団体・制度として存在しているのに対し、MELは漁業・養殖・流通加工の3区分を一つのスキームの中で運営しているという構造上の違いがあります。

認証 発足 主な対象 特徴
MEL 2007年(日本) 漁業・養殖・流通加工 日本の漁業実態を反映。3区分を一体運営
MSC 1997年(国際) 天然水産物 世界的に知名度が高い「海のエコラベル」
ASC 国際 養殖水産物 養殖に特化

GSSIの承認という国際的な位置づけ

「日本発の制度だから国内向けなのでは」と受け取られることがありますが、MELは国際的な承認を得ています。GSSI(Global Sustainable Seafood Initiative:世界水産物持続可能性イニシアチブ)から2019年12月12日(現地時間)に承認を取得し、さらに2023年9月21日(現地時間)には、より新しいBenchmark Tool Version 2の審査を世界で2番目に完了しています。

GSSIは、各国の水産エコラベルがFAOガイドラインに沿って運営されているかを評価するベンチマークの仕組みです。東京2020調達コードでも、GSSIによる承認がFAOガイドライン準拠の判断材料として参照されました。MELが「日本発、世界が認める水産エコラベル」を掲げている根拠がここにあります。

なお、MELは今後の課題として気候変動対応、人権侵害問題への対応、海洋プラスチック削減、食品安全、サプライチェーンの透明化、アニマルウェルフェア推進といったテーマを挙げており、養魚用飼料の認証規格開発も進めています。認証の対象範囲は資源管理から社会的責任へと広がりつつあります。

MEL認証商品を取り扱う企業の例

制度の説明だけでは実感が湧きにくいため、実際にMEL認証商品を扱う事業者の例を見ておきます。

イトーヨーカドー

総合スーパーのイトーヨーカドーは、2020年に日本の大手小売業としては初めてMEL認証を取得しました。オリジナルブランド商品「顔が見えるお魚。」シリーズの中で、ぶり・かんぱち・真鯛・平目の4魚種に認証ラベルを付与して販売しています。小売大手が認証を取得したことは、サプライチェーン全体に対して認証取得のインセンティブを生む出来事でもありました。

日本生活協同組合連合会

コープ商品の開発と全国の生協への供給を担う日本生活協同組合連合会は、SDGsやエシカル消費を意識した「コープサステナブル」シリーズを展開しています。「海の資源を守る」「森の資源を守る」「オーガニック」「リサイクル材使用」の4テーマで構成されており、このうち海の資源をテーマとした商品群にMEL認証を受けた商品が含まれます。しらす干しやサーモンなどが該当します。

認証の広がり

MEL協議会の公表によれば、認証件数は2022年10月時点で200件を超えています。認証を受けた事業者・団体の一覧はMEL協議会の公式サイトで公開されており、取引先の認証取得状況を確認したい場合はここを参照するのが確実です。

まとめ

MELは、日本発の水産エコラベル認証制度「マリン・エコラベル・ジャパン」の略称です。本記事の要点を整理します。

  • 運営主体は一般社団法人マリン・エコラベル・ジャパン協議会(2016年12月設立)。規格を作る協議会、審査する認証機関、認証機関を認定するJABという三層構造で第三者性を担保している
  • 源流は2005年のFAOガイドライン採択を受けて2007年に大日本水産会の事業として発足した制度で、2016年に法人化。2017年の水産基本計画にも位置づけられた
  • 認証は3種類。漁業(3要件・有効期間5年)、養殖(4要件・3年)、流通加工段階CoC(4要件・3年)。いずれも1年ごとの年次監査がある
  • 費用の目安は初回で漁業85万円〜、養殖70万円〜、流通加工35万円〜(2023年2月時点・審査サイト1カ所)。別途、年次審査・更新審査の費用とロゴマーク使用許諾料が必要
  • ビジネス上の意味は、調達基準の要件、ブランド差別化、ESG開示におけるトレーサビリティの根拠という3つの層で捉えられる
  • 国際的な位置づけとしてGSSIの承認を2019年に取得し、2023年にはBenchmark Tool Version 2の審査を世界で2番目に完了している

資料の中で「MEL」という三文字に出会ったとき、それが単なる環境配慮のシンボルではなく、審査・監査・トレーサビリティを伴う認証制度であり、取引条件にも関わりうるものだと理解できていれば、その資料の読み方は変わってくるはずです。

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