RFM分析とは?3つの指標による顧客分類のやり方と施策例をわかりやすく解説

rfm分析 マーケティング戦略

「顧客リストは何万件もあるのに、誰に何を届ければいいのかわからない」——メール配信やDM、インサイドセールスの架電先を選ぶたびに、こうした迷いに突き当たる担当者は少なくありません。全員に同じ内容を送れば反応率は下がり、かといって一人ひとりの状況を手作業で確認するのは現実的ではありません。

こうした「顧客の絞り込み」の悩みに対して、古くから使われ続けているのがRFM分析です。読み方は「アールエフエムぶんせき」。購買履歴という最低限のデータさえあれば実施でき、Excelでも十分に始められる手軽さがありながら、優良顧客と離反しかけている顧客を明確に切り分けられます。

この記事では、RFM分析の3つの指標の意味から、メリット・デメリット、具体的な手順、Excelでのランク付けの方法、セグメント別の施策例、そしてデシル分析やCPM分析との違いまでを、実務で使える形で整理して解説します。

RFM分析とは

RFM分析とは、顧客の購買履歴を「Recency(最終購入日)」「Frequency(購入頻度)」「Monetary(購入金額)」という3つの指標で評価し、顧客をグループに分類する分析手法です。RFMは、この3つの英単語の頭文字を取った略称です。

ルーツは古く、1960年代のアメリカの通信販売業界で広まった手法だとされています。カタログやダイレクトメールの発送先を絞り込み、限られた郵送コストで応答率を最大化するために編み出されました。「送る相手を選ぶ」という課題意識は、メール配信・広告配信・インサイドセールスの架電先選定が当たり前になった現在でもまったく同じであり、だからこそ半世紀以上たった今も基本手法として使われ続けています。

Recency(最終購入日)・Frequency(購入頻度)・Monetary(購入金額)の3指標

3つの指標は、それぞれ顧客の異なる側面を映し出します。

指標 意味 見ているもの 評価の向き
R:Recency 最終購入日からの経過日数 顧客が今も自社と接点を持っているか(鮮度) 直近であるほど高評価
F:Frequency 一定期間内の購入回数 どれだけ習慣的に利用しているか(定着度) 回数が多いほど高評価
M:Monetary 一定期間内の購入金額の累計 どれだけ売上に貢献しているか(規模) 金額が大きいほど高評価

3指標のなかでも、Rの重要度がもっとも高いとされるのが一般的な考え方です。過去に100万円買ってくれた顧客でも、最終購入が3年前ならすでに他社へ移っている可能性が高い一方、先週買ってくれた顧客は次の提案に反応する可能性が残っています。売上の大きさ(M)だけを見て顧客を評価すると、この「今つながっているか」という決定的な違いを見落としてしまいます。

なお、指標の定義は業種によって柔軟に読み替えられます。BtoB SaaSであれば、Rを「最終ログイン日」、Fを「月あたりのログイン回数や問い合わせ件数」、Mを「契約金額やアップセル額」と置き換える運用も広く行われています。購買サイクルが長い商材では、Rの判定期間を3〜6カ月と長めに設定するなど、自社の取引サイクルに合わせた調整が欠かせません。

RFM分析でわかること・目的

RFM分析の目的は、限られたマーケティングリソースを、成果につながりやすい顧客に優先的に配分することです。具体的には、次のようなことがわかります。

  • 売上を支えている優良顧客が、全体の何%を占めているか
  • 以前はよく買っていたのに、最近は接点が途切れている「離反予備軍」は誰か
  • 初回購入から2回目につながっていない新規顧客がどれだけいるか
  • しばらく取引のない休眠顧客のうち、過去に大きく貢献していた再獲得候補は誰か

つまりRFM分析は、顧客を「良い・悪い」で評価する道具ではなく、顧客の状態を見極めて、次に打つべき施策を決めるための道具です。同じ「売上ゼロの顧客」でも、まだ買ったことがない新規と、かつての優良顧客が離れた休眠では、取るべきアクションはまったく異なります。その違いを可視化できる点に価値があります。

RFM分析のメリット

詳細な顧客属性データがなくても実施できる

RFM分析に必要なのは、「誰が・いつ・いくら買ったか」という購買履歴だけです。年齢や職種、興味関心といった属性データやアンケート結果がなくても始められます。受注データや購買ログはどの企業にも必ず蓄積されているため、新たなデータ収集の投資なしに、今日から着手できるのが最大の利点です。

施策の優先順位を数字で判断できる

「なんとなく重要そうな顧客」ではなく、スコアという共通言語で顧客を並べられるため、社内の合意形成がしやすくなります。営業部門とマーケティング部門で「誰にアプローチすべきか」の認識をそろえる際にも、RFMスコアは客観的な根拠として機能します。

施策の費用対効果が高まりやすい

DMの郵送費、広告の配信費、営業の工数はいずれも有限です。反応する見込みの薄い層への配信を減らし、反応しやすい層に集中させるだけで、同じ予算でも成果が変わります。RFM分析はもともとDMコスト削減のために生まれた手法であり、この「無駄を削る」用途に最適化されています。

PDCAを回しやすく、変化を追跡できる

RFMスコアはある時点のスナップショットにすぎません。しかし、月次や四半期ごとに更新して各セグメントの人数推移を追えば、「優良顧客が何人減ったか」「休眠から復活した顧客が何人いたか」という形で施策の効果を定量的に検証できます。継続運用してこそ真価を発揮する手法です。

RFM分析のデメリット・注意点

万能な手法ではありません。以下の弱点を理解したうえで使う必要があります。

デメリット 内容 対処の方向性
購入頻度が低い商材に不向き 住宅・自動車・大型設備など、購入間隔が数年単位の商材ではFに差が出ず、分類が機能しない 保守契約や消耗品購入など、別の接点を頻度指標に置き換える
分析期間で結果が変わる 対象期間を1年にするか3年にするかで、同じ顧客のランクが入れ替わる 商材の購買サイクルの2〜3倍を目安に期間を固定し、毎回同じ条件で比較する
顧客属性や購入理由まではわからない 「なぜ買ったか」「何を買ったか」は3指標に含まれない CTB分析やアンケート、行動ログと組み合わせる
過去のデータしか見ていない 将来の購買意向や、これから伸びる顧客の予兆は捉えられない Webサイトの閲覧行動やMAのスコアリングと併用する
新規顧客が低評価になりやすい 買い始めたばかりの顧客はFもMも小さく、有望でも低ランクに沈む RとF・Mを分けて見る、新規は別枠で評価する

とくに見落とされやすいのが、「Rだけが高い新規顧客」の扱いです。スコアの単純合計で顧客を並べると、育成すれば優良顧客になり得る層が最下位グループに埋もれてしまいます。合計点だけでなく、R・F・Mの組み合わせパターンで見る習慣をつけることが重要です。

RFM分析のやり方・手順

1. 課題の把握と仮説立案

いきなりデータを触る前に、「何を解決したいのか」を決めます。「休眠顧客からの再購入を増やしたい」「上位顧客の離反を止めたい」など目的が定まると、必要な分析期間もランクの区切り方も自然に決まります。目的なしに分析すると、きれいな表ができただけで施策につながらない、という結果になりがちです。

2. 顧客データの集計・整理

購買履歴から、顧客IDごとに「最終購入日」「期間内の購入回数」「期間内の購入金額合計」の3つを算出します。ここで注意したいのが名寄せです。同一人物・同一企業が複数のIDで登録されていると、購入回数も金額も分散し、優良顧客が中位層に見えてしまいます。分析の前にIDの重複を整理しておきましょう。

3. R・F・Mそれぞれのランク付け

各指標を、通常3〜5段階に分けてスコアを付与します。5段階なら最高が5、最低が1です。区切り方には、大きく2つのアプローチがあります。

  • データの分布から決める:全顧客を金額順に並べて上位20%ずつ区切るなど、機械的に5等分する方法。偏りが出にくい
  • 事業戦略から決める:「年間100万円以上を最上位とする」など、自社の基準値で区切る方法。施策に直結しやすい

初回は分布ベースで区切って全体像をつかみ、2回目以降は施策に合わせて基準を固定する、という進め方が現実的です。

4. 顧客のグループ分類

スコアを組み合わせて顧客を分類します。R5・F5・M5の顧客は「555」、すべて最低なら「111」と表記する方式が一般的です。5段階×3指標では125通りの組み合わせが生まれるため、そのままでは扱いきれません。実務では、4〜8程度の意味のあるセグメントに束ねるのが定石です。

5. 施策の立案・実行、効果検証

セグメントごとに打ち手を設計し、実行します。そして必ず、一定期間後に同じ条件で再集計し、セグメント間の移動を確認します。「離反予備軍が何人、優良顧客に戻ったか」を測ることが、次の改善につながります。

Excelを使ったRFM分析の具体例

専用ツールがなくても、Excelだけで一連の流れを完結できます。

ステップ1:ピボットテーブルで顧客ごとに集計する

購買履歴の一覧(1行1取引)を用意し、ピボットテーブルを作成します。行に「顧客ID」、値に「購入日の最大値」「購入IDのカウント」「購入金額の合計」を配置すれば、顧客単位のR・F・Mの元データが一気に揃います。

最終購入日は日付のままでは扱いにくいため、=TODAY()-最終購入日 のように基準日からの経過日数へ変換しておくと、後のランク付けが楽になります。

ステップ2:IF関数・IFS関数でランクを付ける

経過日数がセルC2にある場合、5段階のR評価は次のように書けます。

=IF(C2<=30,5,IF(C2<=90,4,IF(C2<=180,3,IF(C2<=365,2,1))))

Excel 2019以降やMicrosoft 365ならIFS関数のほうが読みやすくなります。

=IFS(C2<=30,5,C2<=90,4,C2<=180,3,C2<=365,2,TRUE,1)

F値・M値も同じ要領で作ります。購入回数がD2にある場合の例は次のとおりです。

=IFS(D2>=10,5,D2>=6,4,D2>=3,3,D2>=2,2,TRUE,1)

ランクの基準値は、下表のように事前に一覧化しておくと、社内共有もメンテナンスもしやすくなります。

ランク R:最終購入からの日数 F:購入回数 M:購入金額累計
5 30日以内 10回以上 100万円以上
4 31〜90日 6〜9回 50万〜100万円未満
3 91〜180日 3〜5回 20万〜50万円未満
2 181〜365日 2回 5万〜20万円未満
1 366日以上 1回 5万円未満

ステップ3:スコアを結合してセグメントを判定する

R・F・Mのランクが並んだら、=E2&F2&G2 のような数式で「543」といった3桁コードを作ります。合計点を出したい場合は =SUM(E2:G2) で3〜15点のスコアになります。

さらに =IF(AND(E2>=4,F2>=4),"優良顧客",IF(AND(E2<=2,F2>=4),"離反予備軍",...)) のように条件を重ねれば、セグメント名を自動で振ることも可能です。

ステップ4:2軸のクロス集計で全体像を見る

3指標を同時に見ると複雑になるため、まずは2軸で確認します。ピボットテーブルの行に「Rランク」、列に「Fランク」、値に「顧客IDの個数」を置くと、5×5のマス目に顧客が何人ずついるかが一目でわかります。R低×F高のマスに人数が多く溜まっていれば、離反が進行しているサインです。条件付き書式でヒートマップにすると、変化を直感的に追えます。

顧客数が数十万件を超えたり、複数条件での深掘りやリアルタイム更新が必要になったりした段階では、TableauなどのBIツールやCRM/MAツール側の分析機能に移行するのが現実的です。BIツール上でRFMを可視化しておけば、スコアの更新やダッシュボードでの共有が自動化され、分析の担当者依存を減らせます。

顧客セグメント別のマーケティング施策例

分類しただけでは売上は動きません。セグメントごとに、狙いの異なる施策を設計します。

セグメント RFMの特徴 状態 施策の方向性
優良顧客 R高・F高・M高 定着した中心顧客 上位プランの提案、限定情報の先行案内、担当者による関係強化
安定顧客 R高・F高・M中 習慣化しているが単価が低い セット提案やクロスセル、まとめ買い特典で単価向上
新規顧客 R高・F低・M低 買い始めたばかり オンボーディング、使い方コンテンツ、2回目購入の後押し
離反予備軍 R低・F高・M高 かつての優良顧客が遠のいている 最優先でフォロー。担当者からの直接連絡、利用状況ヒアリング
休眠顧客 R低・F低・M低 長期間接点なし 低コストのメール中心。反応があった層だけ次の施策へ
一見客 R低・F1回・M低 1回だけの購入で終了 定期的な情報提供にとどめ、コストをかけすぎない

このうち、もっとも優先度が高いのは「離反予備軍」です。優良顧客は放っておいても当面は買い続けますが、離反予備軍は今動かなければ休眠へ落ちます。しかも過去に高頻度・高単価で購入した実績があるため、戻ってきたときのインパクトが大きい層です。ここに人的リソースを厚く配分するのが、RFM分析を実務に活かす基本形といえます。

一方、休眠顧客への施策は費用対効果が落ちやすいため、まずは低コストなメール配信で反応の有無を確かめ、開封やクリックがあった層に絞って次の手を打つ、という段階設計が有効です。

RFM分析と他の顧客分析手法との違い

デシル分析との違い

デシル分析は、顧客を購入金額の多い順に並べて10等分し、各グループの売上構成比を見る手法です。指標が金額のみで、計算も単純なため導入しやすい反面、「いつ買ったか」「何回買ったか」を見ないという限界があります。3年前に大量購入した顧客と、毎月買い続けている顧客が同じグループに入ってしまうのです。全体の売上分布をざっくり把握したいならデシル分析、施策のターゲットを選びたいならRFM分析、という使い分けになります。

CPM分析との違い

CPM(Customer Portfolio Management)分析は、RFMの3指標に「初回購入からの経過期間」や「離脱期間」といった時間軸を加え、顧客を「初回客・よちよち客・コツコツ客・優良客」などの育成段階で分類する手法です。

RFM分析が現時点のスナップショットであるのに対し、CPM分析は顧客の育成プロセスを見ます。RFMでは「今どの状態か」しかわからず、その顧客が成長中なのか衰退中なのかは判別できません。CPM分析は中長期のLTV向上を目的とする場合に適していますが、その分だけ長期の履歴データが必要になります。

ABC分析との違い

ABC分析は、売上金額などの指標で対象を上位から並べ、AランクからCランクに重み付けする手法です。対象は顧客に限らず、商品や在庫の優先順位付けに使われることが多い点がRFM分析との大きな違いです。「どの商品に在庫を厚くするか」がABC分析、「どの顧客に販促を打つか」がRFM分析、と役割が分かれます。

CTB分析との違い

CTB分析は、Category(カテゴリ)・Taste(テイスト・デザイン)・Brand(ブランド)の3軸で顧客の嗜好を分類する手法です。RFM分析が「どれだけ買ったか」という量を見るのに対し、CTB分析は「何を好むか」という質を見ます。RFM分析で抽出した優良顧客に対し、CTB分析で好みに合った商品を提案する、といった組み合わせで効果を発揮します。

RFM分析の発展形(RFMC分析・MRFI分析・RFM-D分析)

RFMの弱点である「何を買ったかがわからない」を補うため、指標を追加した派生手法も使われています。

手法 追加される指標 わかること
RFMC分析 Category(購入カテゴリ) どの商品カテゴリに関心が偏っているか
MRFI分析 Item(購入品目) 具体的にどの商品を買ったか、併売の傾向
RFM-D分析 Distance(店舗・拠点との距離) 商圏や地域特性に応じたアプローチ設計

指標を増やすほど分析は精緻になりますが、同時にセグメント数が爆発的に増え、運用負荷も上がります。まずは基本のRFM分析で運用を回し、施策設計の解像度が足りないと感じた段階で発展形を検討する、という順番が現実的です。

まとめ

RFM分析は、Recency(最終購入日)・Frequency(購入頻度)・Monetary(購入金額)の3指標で顧客を分類し、施策の優先順位を決めるための手法です。1960年代の通信販売業界で生まれた古典的な手法ですが、購買履歴さえあれば実施でき、Excelでも完結する手軽さから、現在も顧客分析の基本として広く使われています。

要点を整理すると次のとおりです。

  • 3指標のなかではR(最終購入日)の重要度がもっとも高い。金額だけで顧客を評価すると、すでに離れた顧客を過大評価してしまう
  • メリットは、属性データ不要で始められること、優先順位を数字で判断できること、継続運用で変化を追えること
  • デメリットは、購入頻度の低い商材に不向きなこと、分析期間で結果が変わること、購入理由や属性はわからないこと
  • 手順は「課題設定→データ集計→ランク付け→グループ分類→施策実行と効果検証」の5ステップ
  • Excelではピボットテーブルで集計し、IF関数・IFS関数で5段階のランクを付与、2軸のクロス集計で全体像を確認する
  • セグメント別では、離反予備軍への対応がもっとも優先度が高い。休眠顧客は低コスト施策から段階的に
  • デシル分析は金額のみの分布把握、CPM分析は育成プロセスの可視化、ABC分析は商品の優先順位付け、CTB分析は嗜好の把握と、それぞれ役割が異なる

大切なのは、分析して分類することがゴールではないという点です。セグメントごとに打ち手を決め、実行し、一定期間後に再集計してセグメントの移動を確認する——この繰り返しによって、RFM分析ははじめて成果につながる仕組みになります。

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