「コンテンツマーケティングに取り組みたいけれど、何から始めればいいのかわからない」「記事やオウンドメディアで本当に成果が出るのか、イメージが湧かない」——そんな悩みを抱えていませんか。
広告に頼らず、価値あるコンテンツで見込み顧客を惹きつけるコンテンツマーケティングは、いまや多くの企業が取り組む王道の施策です。とはいえ、抽象的な理論だけを読んでも、自社でどう動けばいいのかは見えてきません。もっとも参考になるのは、実際に成果を出している企業の「事例」です。
この記事では、BtoB・BtoCそれぞれで成果を上げている実在企業のコンテンツマーケティング事例を10社紹介します。さらに、成功事例に共通するポイントや、自社で始めるための具体的な進め方まで解説します。読み終えるころには、自社の一歩目が明確に描けるはずです。
コンテンツマーケティングとは?基本をおさらい
コンテンツマーケティングとは、ユーザーにとって価値のある情報(コンテンツ)を継続的に発信することで、見込み顧客を惹きつけ、関係を育て、最終的な成果につなげるマーケティング手法です。記事、オウンドメディア、動画、SNS、ホワイトペーパーなど、発信の形は多岐にわたります。
売り込みではなく「役立つ情報」を軸にする点が特徴で、ユーザーの課題や悩みに寄り添うことで、企業への信頼や好意を積み上げていきます。
コンテンツマーケティングと広告の違い
広告は、費用を払っている間だけ露出が続く「フロー型」の施策です。出稿を止めれば効果もなくなります。一方、コンテンツマーケティングは、一度作った記事や動画が資産として残り続ける「ストック型」の施策です。
たとえばSEOを意識した記事は、公開後も検索エンジン経由で長期にわたって集客し続けます。すぐに成果が出るわけではありませんが、時間をかけて積み上げるほど、広告費に依存しない安定した流入基盤が築ける点が大きな違いです。
| 項目 | コンテンツマーケティング | 広告 |
|---|---|---|
| 効果の性質 | ストック型(資産が残る) | フロー型(出稿中のみ) |
| 成果までの時間 | 中長期 | 短期 |
| 主なチャネル | オウンドメディア・SEO・SNS・動画 | リスティング・ディスプレイ等 |
| 向いている目的 | 信頼構築・見込み顧客育成 | 即時の認知・獲得 |
BtoBとBtoCで異なるアプローチ
コンテンツマーケティングは、BtoB(対法人)とBtoC(対個人)で狙いや設計が変わります。
BtoBは検討期間が長く、複数の関係者が意思決定に関わります。そのため、課題解決に役立つノウハウやホワイトペーパーを通じて、リード獲得と見込み顧客の育成(ナーチャリング)につなげる設計が主流です。SEOで潜在顧客を集め、資料ダウンロードで接点を作る流れが定番といえます。
一方BtoCは、より感情や共感、ライフスタイルへの訴求が効きやすい領域です。ブランドへの愛着(ファン化)やリピート、SNSでの拡散を狙ったコンテンツ設計が中心になります。次章から、それぞれの実在事例を見ていきましょう。
BtoBコンテンツマーケティングの成功事例5選
まずは、法人向けサービスを展開する企業のオウンドメディア事例を5社紹介します。いずれも、ノウハウ発信を通じて見込み顧客との接点づくりに取り組んでいる代表的な事例です。
1. サイボウズ式(サイボウズ)
グループウェアやkintoneを展開するサイボウズが運営するオウンドメディアです。「新しい価値を生み出すチームのメディア」をテーマに、働き方やチームワークに関するコンテンツを発信しています。
特徴的なのは、製品のPRやコンバージョン導線をあえて前面に出さない点です。直接の売上ではなく、企業やブランドの認知度向上を目的に据えている点が、多くの記事で紹介されています。編集にこだわったコンテンツが評価され、月間100万PVを超える規模に成長したと言われており、BtoB企業のオウンドメディアとしては先進的な成功事例として知られています。
2. LISKUL(SO Technologies)
SO Technologies(旧ソウルドアウト)が2014年に開設したBtoBマーケティングメディアです。Webマーケティングに悩む中小・ベンチャー企業に、正しいノウハウを届けることをコンセプトにしています。
自社サービスの知見を反映した記事と、ダウンロード資料(eBook)の設置によって、リード獲得につなげている点が成功要因として挙げられています。開設以来650本以上の記事を蓄積し、多くの記事が検索上位を獲得していると紹介されており、記事とホワイトペーパーを組み合わせたBtoBリード獲得の代表例といえます。
3. Money Forward Bizpedia(マネーフォワード)
マネーフォワードが運営する、経理・税務・人事など、バックオフィス業務の効率化を支援するオウンドメディアです。税理士や公認会計士などの専門家が監修することで、情報の信頼性を高めています。
2014年にコンテンツマーケティングを開始し、SEO強化を目的にスタートしました。現在は月間平均100万PV規模を持ち、流入の約9割を検索(オーガニック)から獲得していると紹介されています。量産型から独自性・エンゲージメント重視へと方針を進化させてきた点も、SEOを軸にしたメディア運営の参考になります。
4. データのじかん(ウイングアーク1st)
帳票・BIツールを展開するウイングアーク1stが運営する、データ活用をテーマにしたオウンドメディアです。「データで越境者に寄り添う」というコンセプトで、データにまつわる幅広いコンテンツを発信しています。
開設から5年で月間80万PV規模に成長したと紹介されており、その鍵は徹底したデータ活用にあるとされています。潜在層を顕在層へ引き上げること、メディアとの関係を高めることを役割に据え、データ駆動型のコンテンツマーケティングに取り組んでいる点が特徴です。
5. 才流(SAIRU NOTE)
BtoBマーケティング支援を行う才流が運営するオウンドメディアです。同社は、再現性のあるBtoBマーケティングやセールスの「メソッド」を、記事やホワイトペーパーとして公開しています。
個人情報の入力なしで閲覧・ダウンロードできる形でノウハウを惜しみなく提供し、「BtoBマーケティングといえば才流」という認知を築いてきたと紹介されています。約5年かけてメソッドを積み上げ、専門性の高いコンテンツでブランドと信頼を確立した事例です。
BtoCコンテンツマーケティングの成功事例5選
続いて、個人消費者向けの事例を5社紹介します。共感やファン化を軸に、コンテンツで顧客との関係を深めている企業が並びます。
1. 北欧、暮らしの道具店(クラシコム)
クラシコムが運営するECサイト兼オウンドメディアです。トップページに「読みもの」と「お買いもの」が並列で配置され、ECでありながら雑誌のような回遊体験が設計されています。
記事から何個売れたかという数値よりも、伝えたいことが読者に届いたかを重視する姿勢が特徴です。ユーザーファーストなコンテンツづくりによって高いリピート率を実現していると紹介されており、コンテンツを通じて「世界観」に共感するファンを育てる好例といえます。
2. となりのカインズさん(カインズ)
ホームセンターのカインズが2020年に創刊した、「ホームセンターを遊び倒すメディア」をコンセプトとするオウンドメディアです。創刊から短期間で月間数百万PV規模に成長したと紹介されています。
SEO記事と企画記事を切り分けず、「情報網羅+キャッチーさ」を融合させたコンテンツづくりが特徴です。文章力よりも「そのテーマをどれだけ好きか」を重視したライター選定や、社員が顔出しで登場する手触り感のある記事づくりで、ファン創出とバズを生み出しています。
3. よなよなの里(ヤッホーブルーイング)
「よなよなエール」で知られるクラフトビールメーカー、ヤッホーブルーイングのファン向けオウンドメディアです。マス広告ではなく、ファンとのコミュニケーションを軸にした施策で知られています。
オウンドメディア「よなよなの里」やSNSを組み合わせ、記事コンテンツの企画制作から各SNSチャネルの運用までを一貫して行っています。顧客の声を一つひとつエゴサーチして反応するなど、双方向のコミュニケーションで熱狂的なファンを育てている点が、ファンマーケティングの代表例として紹介されています。
4. くらしの研究(花王)
花王が運営する、掃除・洗濯・料理・節約など「暮らしのお役立ち情報」を発信するオウンドメディアです。生活・料理研究家や管理栄養士などの専門家が監修することで、情報の信頼性を高めています。
各記事には関連製品へのリンクが設置され、購入への導線が用意されています。専門性の高い実用情報を通じて、消費者との接点(タッチポイント)を増やし、ブランドへの親近感と信頼を高める狙いがうかがえる事例です。長年培った衛生・清浄文化の知見を活かしている点も強みとされています。
5. mercan(メルカリ)
メルカリが2016年に創刊した、採用を主目的とするオウンドメディアです。「メルカリではたらく人」を軸に、チーム紹介や社内の出来事を発信しています。
採用力の強化、社内エンゲージメントの向上、ステークホルダーからの信頼獲得を目的に運営されていると紹介されています。記事だけでなくYouTube動画やライブ配信にも取り組み、多様な形で情報を届けているため、自社では「オウンドメディア」ではなく「コンテンツプラットフォーム」と呼んでいる点も特徴的です。採用ブランディングにコンテンツを活用した好例といえます。
成功事例に共通する3つのポイント
10社の事例を振り返ると、業種やBtoB・BtoCの違いを超えて、成功しているメディアには共通点があります。ここでは3つのポイントに整理します。
目的・KPIが明確である
成功している企業は、「何のためにコンテンツを発信するのか」が明確です。サイボウズ式のように認知度向上を狙う場合もあれば、LISKULのようにリード獲得を狙う場合、mercanのように採用を狙う場合もあります。
重要なのは、目的に応じて追うべきKPI(PV、リード数、CVR、リピート率など)が定まっていることです。目的が曖昧なままだと、コンテンツの方向性がぶれ、成果の判断もできません。まず「ゴール」を決めることが出発点になります。
ターゲットに合わせたコンテンツ設計
各社とも、届けたい相手(ターゲット)を深く理解し、その関心や課題に合わせたコンテンツを設計しています。BtoBであれば意思決定者の課題解決ノウハウ、BtoCであればライフスタイルへの共感といった具合です。
北欧、暮らしの道具店の世界観づくりや、となりのカインズさんの「好き」を軸にした企画は、いずれもターゲットが本当に読みたいものを突き詰めた結果です。検索キーワードやペルソナを踏まえ、ユーザー起点でテーマを選ぶことが成果を分けます。
継続的な改善(PDCA)
コンテンツマーケティングは、一度作って終わりではありません。成功事例に共通するのは、公開後も効果測定と改善を繰り返している点です。Money Forward Bizpediaが量産型から独自性重視へ方針を進化させたように、データを見ながらコンテンツの質を高め続けています。
配信して終わりにせず、アクセス解析などで反応を測り、次のコンテンツに活かすPDCAを回す。この地道な継続こそが、長期的な成果につながります。
自社でコンテンツマーケティングを始める進め方
事例と共通点を踏まえ、自社で始めるための基本的な手順を4ステップで解説します。この流れに沿えば、初めてでも迷わず着手できます。
1. 目標・KPIを設定する
最初に、コンテンツマーケティングで達成したい目標を決めます。「リードを増やしたい」「認知度を高めたい」「採用に活かしたい」など、目的によって設計が変わるためです。
目標が定まったら、その達成度を測るKPIを設定します。リード獲得が目的なら資料ダウンロード数やCVR、認知向上ならPVやUUといった具合に、追う指標を具体化しておきましょう。
2. ペルソナ・カスタマージャーニーを設計する
次に、コンテンツを届ける相手を具体的に描きます。年齢や職種、抱えている課題まで踏み込んだペルソナを設定することで、テーマや切り口の精度が上がります。
あわせて、ペルソナが認知から検討、購入・問い合わせに至るまでのカスタマージャーニーを描きます。各段階でどんな情報を求めているかを整理すれば、必要なコンテンツの全体像が見えてきます。
3. コンテンツを企画・制作する
ジャーニーに沿って、必要なコンテンツを企画します。SEOで潜在顧客を集める記事、検討層に向けたホワイトペーパー、共感を生むSNS投稿や動画など、目的とチャネルに合わせて形式を選びましょう。
制作時は、キーワード調査でユーザーの検索ニーズを押さえつつ、自社ならではの一次情報やノウハウを盛り込むことが差別化の鍵です。事例で見たように、専門性と独自性が信頼につながります。
4. 配信し、効果測定・改善を繰り返す
コンテンツを公開したら、オウンドメディアやSNS、メルマガなどを通じて届けます。そして必ず、アクセス解析で反応を測定します。
どの記事が読まれ、どこで離脱し、どれだけ成果につながったかを確認し、改善に活かします。この効果測定と改善のPDCAを回し続けることが、成果を最大化する最大のコツです。焦らず、資産を積み上げる意識で取り組みましょう。
自社運用と外部委託、どちらを選ぶべきか
コンテンツマーケティングを進める際、社内で運用するか、制作会社などに外部委託(外注)するかは悩みどころです。それぞれにメリットと注意点があります。
自社運用は、一次情報や専門知識を反映しやすく、ノウハウが社内に蓄積される点が強みです。一方で、リソースやスキルの確保が課題になりやすく、立ち上げに時間がかかることもあります。
外部委託は、プロの知見とリソースを活用でき、スピーディに質の高いコンテンツを用意できます。ただし、費用がかかるうえ、自社の理解が浅いと意図がずれるリスクもあります。
| 比較項目 | 自社運用 | 外部委託 |
|---|---|---|
| 専門性・一次情報 | 反映しやすい | 共有の工夫が必要 |
| ノウハウ蓄積 | 社内に残る | 残りにくい |
| リソース・スピード | 確保が課題 | 確保しやすい |
| コスト | 人件費中心 | 委託費が発生 |
現実的には、戦略設計や一次情報の提供は自社が担い、制作やSEOの実務は外部の力を借りるといった「ハイブリッド型」を選ぶ企業も多くあります。自社の体制と目的に合わせて、最適なバランスを見極めましょう。
まとめ
コンテンツマーケティングは、広告のように即効性はないものの、時間をかけて集客・信頼の資産を積み上げられる手法です。今回紹介したBtoB・BtoC10社の事例に共通していたのは、「目的とKPIの明確さ」「ターゲットに合わせたコンテンツ設計」「継続的な改善(PDCA)」の3点でした。
自社で始める際は、目標設定からペルソナ設計、企画・制作、効果測定という基本の流れを押さえ、無理なく続けられる体制を整えることが大切です。まずは自社の目的を言語化し、ターゲットが本当に求める一本のコンテンツを作るところから始めてみてください。
