マーケティングとは?身近な例と手法別・企業の成功事例をわかりやすく解説

マーケティング 例 マーケティング戦略

「マーケティングを学べと言われたものの、教科書的な説明ばかりでイメージがつかめない」——そんなもどかしさを感じている方は少なくありません。マーケティングは抽象度の高い言葉で語られがちですが、実際には私たちが毎日目にしているコンビニの棚、スマホに届く通知、店頭のPOPのひとつひとつが、誰かの意図的な設計の結果です。

この記事では、マーケティングの定義といった基礎知識から、身近な生活のなかにある例、手法別の具体例、有名企業の成功事例、そして自社で実践するときのポイントまでを、順を追って整理します。読み終わるころには「マーケティングとは何をすることなのか」を、自分の言葉で説明できる状態になっているはずです。

マーケティングとは何か

マーケティングの定義

マーケティングの定義として最も広く知られているのは、フィリップ・コトラーが示した「顧客のニーズを満たしながら利益を上げる仕組みづくり」という考え方です。コトラーは「マーケティングの目的は、販売を不要にすること」という趣旨の言葉も残しています。売り込まなくても売れる状態をつくる活動全体が、マーケティングだという整理です。

日本国内の公式な定義も更新されています。公益社団法人日本マーケティング協会は2024年1月、34年ぶりにマーケティングの定義を刷新しました。新定義では、顧客や社会とともに価値を創造し、その価値を広く浸透させることでステークホルダーとの関係性を醸成し、より豊かで持続可能な社会の実現を目指す構想およびプロセスである、という趣旨が示されています。1990年の旧定義が「市場創造のための総合的活動」と企業主体で語られていたのに対し、新定義は共創・社会性・持続可能性に重心が移っているのが特徴です。

つまりマーケティングとは、広告を出すことでも、営業を代行することでもありません。誰に、どんな価値を、どう届け、どう関係を続けるかを設計する一連の営みを指します。

観点 よくある誤解 実際のマーケティング
範囲 広告・宣伝のこと 商品開発・価格・流通・販促・顧客維持まで含む
主体 販促担当者だけの仕事 経営・商品・営業・CSを横断する活動
時間軸 短期の売上づくり 中長期のブランドと顧客資産の構築
成果 認知が取れれば成功 顧客の行動変化と収益への貢献

マーケティングが必要とされる理由

なぜ多くの企業がマーケティングに投資するのか。理由は大きく3つあります。

第一に、市場が成熟し、良い商品をつくるだけでは売れなくなったためです。機能や品質での差が縮まり、顧客は「どれを選んでも大差ない」状況に置かれています。そこで、誰のどんな場面に効くのかという意味づけが必要になります。

第二に、顧客の情報収集経路が変わったためです。購買前に検索・比較・口コミ確認を済ませる行動が一般化し、企業が接触できるのは意思決定のかなり後半になりました。検索結果やSNS上に自社の情報が置かれていなければ、検討の土俵にすら上がれません。

第三に、施策の効果が測れるようになったためです。デジタル領域では表示回数、クリック、問い合わせ、受注までを数値で追えます。勘と経験だけでなく、データに基づいて改善を回せる環境が整ったことが、マーケティングの重要性を押し上げています。

身近なマーケティングの例

マーケティングは特別な企業だけのものではありません。日常のなかにも例は無数にあります。

食品・消費財に見る例

スーパーの棚は、マーケティングの実験場のような場所です。目線の高さ(ゴールデンゾーン)に主力商品を置く、レジ前に単価の低い菓子やガムを並べる、といった配置はいずれも購買行動の研究に基づいています。

商品そのものにも設計が入っています。たとえば内容量を減らして価格を据え置く「実質値上げ」への対応として、あえて「食べきりサイズ」「小分けパック」と価値に言い換えて訴求する例は多く見られます。単身世帯の増加という市場変化に合わせて、容量というスペックを「無駄が出ない」という便益に翻訳しているわけです。

期間限定フレーバーも典型例です。定番商品の売上を守りながら、限定品で話題と来店動機をつくり、SNS上の投稿を誘発する設計になっています。

店舗・サービス業に見る例

飲食店の例では、メニュー表の構成がわかりやすいでしょう。松竹梅の3価格帯を並べると、多くの人が真ん中を選ぶ傾向があります(極端の回避)。売りたい価格帯を真ん中に置くのは、価格設定というマーケティングの一部です。

美容室やジムの「初回限定価格」も、体験のハードルを下げて2回目以降の継続につなげる導線設計です。1回あたりの利益ではなく、顧客が生涯にわたってもたらす価値(LTV)で採算を考える発想が背景にあります。

コンビニのポイントカードやアプリのクーポンも同様です。値引きそのものが目的ではなく、購買データを取得し、次の来店を促すことに主眼があります。

季節性・イベントを活用した例

土用の丑の日、恵方巻き、ハロウィン、母の日といった年中行事は、需要が集中する時期をつくり出す仕組みとして機能しています。もともと需要が薄かった時期に「この日に食べるもの」という文脈を与えることで、市場そのものを新しく創った例と言えます。

BtoBでも同じ構造が使えます。年度末の予算消化時期、決算期、展示会シーズンなど、顧客側の意思決定が動きやすいタイミングに合わせて情報提供を集中させるのは、季節性を利用したマーケティングです。

手法別に見るマーケティングの具体例

ここからは手法ごとに、代表的な施策と使いどころを整理します。

手法 主な施策例 向いている目的
デジタルマーケティング SEO、リスティング広告、MA、LP改善 顕在層の獲得・効果測定
SNSマーケティング 公式アカウント運用、UGC活用、インフルエンサー施策 認知拡大・ファン形成
コンテンツマーケティング オウンドメディア、ホワイトペーパー、動画 潜在層の育成・信頼獲得
メールマーケティング メルマガ、ステップメール、セグメント配信 既存顧客の維持・再購入
ダイレクトマーケティング DM、通販、電話、LINE配信 直接反応の獲得・LTV向上

デジタルマーケティングの例

デジタルマーケティングは、Webやアプリなどデジタル接点を使う施策の総称です。身近な例としては、一度見た商品がその後の広告に繰り返し表示されるリターゲティング広告、ECサイトの「この商品を買った人はこちらも」というレコメンド、検索結果の上位に表示されるSEO記事などが挙げられます。

BtoBでは、資料請求フォームからの獲得リードをMA(マーケティングオートメーション)ツールで管理し、Webサイトの閲覧履歴に応じてスコアを付け、確度の高い見込み客だけを営業に渡す流れが一般的になりました。誰がいつ何を見たかが可視化されるため、施策ごとの費用対効果を検証しやすいのが最大の利点です。

一方で、失敗例も少なくありません。ツールを導入したものの配信するコンテンツがなく放置される、広告のクリック数は伸びたのに商談につながらない、といったケースです。原因の多くは、獲得後の設計(誰が何をするか)が決まっていないことにあります。

SNSマーケティングの例

SNSマーケティングは、企業アカウントの発信だけを指すのではありません。むしろ効果が大きいのは、ユーザー自身が投稿してくれるUGC(ユーザー生成コンテンツ)です。

作業服チェーンのワークマンは、その代表例として知られています。同社は自社商品を愛用するブロガーやYouTuberを「アンバサダー」として迎え、金銭的な報酬を支払う代わりに、新商品情報への先行アクセスや商品開発への意見反映という機会を提供する形をとっています。2018年にオープンした新業態「ワークマンプラス」は、初日から行列ができる盛況となり、もともとの作業者中心の客層から一般の女性やライダーへと顧客層を広げました。広告費をかけずに熱量の高い発信者を巻き込んだ点が特徴です。

なお、SNSでは失敗のリスクも高まります。2023年10月1日からは、広告であることを消費者が判別しにくい表示(ステルスマーケティング)が景品表示法上の不当表示として規制対象になりました。インフルエンサーに依頼した投稿は「PR」「広告」といった表記を明確にする必要があり、違反すれば措置命令の対象となり得ます。

コンテンツマーケティングの例

コンテンツマーケティングは、売り込みではなく有益な情報提供によって見込み客との関係をつくる手法です。

株式会社クラシコムが運営する「北欧、暮らしの道具店」は、ECサイトとメディアを一体化させた事例としてよく取り上げられます。まだ買う気のない段階の人にも読まれるコラムを発信し、世界観への共感を積み上げることで、広告依存度を下げながら大きなファン基盤を築きました。年間売上や月間PV、Instagramのフォロワー数はいずれも同業のなかで際立った規模に達しています。

BtoBでは、サイボウズが運営する「サイボウズ式」が知られています。製品の宣伝ではなく働き方やチームワークをテーマにした発信で企業の認知と共感を獲得し、結果としてサービスへの問い合わせや採用面での効果につなげる構造です。

その他の具体例としては、業界データをまとめたホワイトペーパー、導入事例記事、ノウハウ解説動画、ウェビナーなどがあります。いずれも「検討段階の顧客が知りたいこと」に先回りして答えるという点で共通しています。

メールマーケティングの例

メールは古い手法に見えて、いまも費用対効果の高いチャネルです。具体例としては、購入後のフォローメール、カート放棄時のリマインド、誕生月のクーポン配信、セミナー後のステップメールなどがあります。

国内BtoBの開封率はおおむね20〜30%程度のレンジに収まる例が多いとされますが、リストの鮮度やセグメントの精度によって数値は大きく変動します。重要なのは平均値との比較ではなく、自社の過去データと比べて改善しているかどうかです。

効果を高める工夫としては、件名の出し分け(A/Bテスト)、業種や役職でのセグメント分け、行動履歴に応じた出し分けなどが挙げられます。全員に同じ内容を送る一斉配信から、対象を絞った配信に切り替えるだけで反応率が変わるケースは珍しくありません。

ダイレクトマーケティングの例

ダイレクトマーケティングは、メディアを介して顧客と直接つながり、購入や問い合わせといった具体的な反応を促し、その反応をデータとして計測する手法を指します。通信販売、ダイレクトメール(DM)、電話、会員向けLINE配信などが代表例です。

不特定多数に一律の情報を届けるマスマーケティングとは対照的に、購入履歴や年齢、興味関心に応じて内容を変えられるため、「自分向けの情報だ」と感じてもらいやすい点が強みです。また、反応率を数値で追えるため、効果測定と改善がしやすいという特徴もあります。

化粧品や健康食品の通販でよく見られる「まずはお試しサイズ」からの定期購入への引き上げは、典型的なダイレクトマーケティングの設計です。

有名企業のマーケティング成功事例

ユニクロ

ユニクロは、企画から製造・販売までを自社で一貫して担うSPAモデルによって、高品質と低価格の両立を実現しました。

マーケティング面で特徴的なのは、ターゲットの切り方です。多くのアパレルが年齢や性別、テイストでセグメントを絞り込むのに対し、ユニクロは「LifeWear(あらゆる人の生活を豊かにする究極の普段着)」というコンセプトを掲げ、属性ではなく生活上のニーズで市場を捉えました。ヒートテック、エアリズム、ウルトラライトダウンといった商品群は、季節や生活課題に機能で応えるという同じ発想でつくられています。2016年には初のグローバルブランディングキャンペーンとしてLifeWearを打ち出し、CM・SNS・店舗ディスプレイまで一貫した表現でブランドを浸透させています。

スターバックス

スターバックスは、マス広告にほとんど予算を投下しないことで知られる企業です。

同社が重視してきたのは、自宅でも職場でもない「サードプレイス」としての店舗体験です。都市部では滞在型の空間設計、郊外ではロードサイドの立ち寄り型と、立地の性質に応じて店舗のあり方を変え、商圏ごとに最適な体験を提供する方針を取っています。広告で認知を取りにいくのではなく、店舗体験・口コミ・SNS上の顧客発信・リワード会員基盤を組み合わせ、顧客自身がブランドを語る構造をつくった点が本質です。新商品や季節限定商品の情報がSNSで自然に拡散されるのも、この土台があるからこそ成立しています。

レッドブル

レッドブルは、飲料メーカーでありながらメディア企業のように振る舞う企業として有名です。

「翼をさずける」というブランドメッセージのもと、エクストリームスポーツ、音楽、カルチャーへの投資を続け、イベントの主催・映像化・配信・選手育成までを含むエコシステムを構築してきました。2012年の「レッドブル・ストラトス」では、スカイダイバーが成層圏から降下する挑戦をYouTubeでライブ配信し、800万人以上が同時視聴したと報じられています。F1のOracle Red Bull Racingも同じ構造で、スピードや挑戦というブランドイメージを高い密度で表現する装置になっています。

商品の機能を訴求するのではなく、顧客が抱く自己イメージそのものに入り込むことで、代替されにくいポジションを築いた事例です。

ハーゲンダッツ

ハーゲンダッツは、ポジショニングと流通のコントロールで市場を創った事例として語られます。

日本市場への参入時、同社は販路を百貨店や高級スーパーなどに絞り、素材と品質へのこだわりを打ち出しました。商品はひとりで食べきれる小さなサイズにし、価格はコーヒー1杯分程度に設定。これにより、「日常のご褒美として手が届く贅沢」という位置づけが成立しました。「Shall we ハーゲンダッツ?」といったフレーズを用いた広告も、大人の男女というターゲットに強い印象を残しています。結果として、国内アイスクリーム市場に「プレミアムアイスクリーム」というジャンルそのものを切り開きました。

企業 中心となる打ち手 学べるポイント
ユニクロ SPA+LifeWearコンセプト 属性でなくニーズで市場を捉える
スターバックス サードプレイスの体験設計 広告以外で語られる仕組みをつくる
レッドブル コンテンツとイベントへの投資 商品ではなく世界観を売る
ハーゲンダッツ 販路限定と価格設定 ポジショニングで新市場を創る

マーケティングを成功させるためのポイント

ターゲット・競合分析を行う

出発点は、市場と自社の現在地を把握することです。一般的には、PEST分析や3C分析で外部環境と競合、自社の状況を整理し、STP(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)で誰にどう位置づけて売るかを決め、4P(Product・Price・Place・Promotion)で具体的な施策に落とし込む、という流れが用いられます。

ここで陥りやすいのが、ターゲットを広く取りすぎることです。「20〜60代の男女」といった設定では、訴求メッセージが誰にも刺さりません。年齢や業種だけでなく、どんな場面で何に困っているのかまで具体化したペルソナを設計すると、施策の判断基準が明確になります。

KPIを設定しPDCAを回す

施策の良し悪しを判断するには、事前に指標を決めておく必要があります。最終ゴール(KGI)を売上や受注件数とするなら、そこに至る中間指標をKPIとして分解します。

段階 KPIの例
認知 表示回数、指名検索数、SNSリーチ
興味・比較 セッション数、資料ダウンロード数、滞在時間
検討 問い合わせ数、商談化率
購入・継続 受注数、CPA、リピート率、LTV

重要なのは、KPIを設定して終わりにしないことです。計測→検証→改善のサイクルを一定の周期で回し、想定と結果のズレがどの段階で起きているかを特定します。たとえば問い合わせは増えたのに受注が伸びないなら、集客の質か商談プロセスに原因があると切り分けられます。

差別化ポイントを明確にする

競合と同じ土俵で同じことを言えば、比較されるのは価格だけになります。値下げ競争は体力勝負であり、多くの企業にとって持続可能な戦略ではありません。

差別化の切り口は価格以外にも複数あります。特定用途への特化、サポート体制、納期、専門性、購入後の体験、ブランドが体現する価値観などです。前述の事例で言えば、レッドブルは味ではなく世界観で、ハーゲンダッツは量ではなく上質さで、それぞれ比較の軸をずらしています。自社が「何において一番か」を一文で言えるかどうかが、ひとつの目安になります。

マーケティング施策で失敗しないための注意点

最後に、実務でつまずきやすいポイントを整理します。

即効性を期待しすぎない:SEOやコンテンツマーケティングは、成果が出るまでに数か月から1年単位の時間がかかるのが一般的です。短期の獲得が必要なら広告、中長期の資産化ならコンテンツ、と目的に応じて手段を使い分ける必要があります。

手段が目的化する:SNSを始めること、ツールを導入すること自体が目的になってしまうケースは非常に多く見られます。「何のためにやるのか」「達成できたと判断する基準は何か」を先に決めておくことが欠かせません。

流行の手法に飛びつく:他社で成功した施策が自社で機能するとは限りません。顧客層、商材の単価、購買までの検討期間が異なれば、有効なチャネルも変わります。事例は「そのまま真似する対象」ではなく「構造を学ぶ材料」として扱うのが適切です。

法規制を軽視する:前述のステルスマーケティング規制のほか、景品表示法上の優良誤認・有利誤認、薬機法、個人情報保護法など、表現やデータの扱いには複数の規制が関わります。特にインフルエンサー施策や口コミ活用では、広告表記の有無が問題になりやすいため注意が必要です。

社内連携が取れていない:マーケティングで獲得した見込み客を営業がフォローしない、現場の声が商品開発に届かない、といった分断は成果を大きく損ないます。部門をまたいで指標と情報を共有する体制づくりが前提になります。

まとめ

本記事では、マーケティングの例を多角的に見てきました。要点は次のとおりです。

  • マーケティングは広告のことではなく、誰にどんな価値を届け、関係を続けるかを設計する活動全体を指す。日本マーケティング協会は2024年に34年ぶりに定義を刷新し、顧客・社会との共創と持続可能性を前面に打ち出した
  • 身近な例は、スーパーの棚の配置、メニューの3価格帯、初回限定価格、季節イベントの創出など、日常のいたるところに存在する
  • 手法別に見ると、デジタル、SNS、コンテンツ、メール、ダイレクトの各マーケティングは目的が異なり、認知から継続まで役割を分担している
  • 企業事例では、ユニクロはニーズ起点のコンセプト、スターバックスは体験による口コミ設計、レッドブルは世界観のコンテンツ化、ハーゲンダッツはポジショニングによる新市場創出が、それぞれ成功の核になっている
  • 実践では、ターゲットと競合の分析、KPI設定とPDCA、差別化ポイントの明確化が土台となる
  • 一方で、即効性への過度な期待、手段の目的化、流行への追随、法規制の軽視、社内分断は典型的な失敗要因となる

事例をそのまま模倣するのではなく、なぜその打ち手が機能したのかという構造を読み解き、自社の顧客と商材に置き換えて考えることが、成果につながる第一歩になります。

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