The Model(ザ・モデル)とは?意味・仕組み・4つのプロセスをわかりやすく解説

the model とは ビジネス用語

「The Model(ザ・モデル)とは、そもそもどういう意味なのか」「営業を分業する組織体制のことらしいが、自社にどう当てはめればいいのか分からない」——BtoB営業やマーケティングの現場で、こうした疑問を抱えている方は少なくありません。SaaS企業を中心に急速に広まったThe Modelは、いまや業界を問わず営業・マーケティングの共通言語になりつつあります。しかし言葉だけが一人歩きし、「分業すればうまくいく」という誤解も生まれています。

この記事では、The Modelの定義や生まれた背景から、4つの部門(マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセス)の役割分担、導入メリットと見落としがちなデメリット、そして運用を成功させるための具体的なポイントまで、体系的に解説します。読み終える頃には、The Modelを「自社の営業組織にどう設計・活用するか」という視点で語れるようになるはずです。

The Model(ザ・モデル)とは

The Modelの定義と生まれた背景

The Model(ザ・モデル)とは、顧客獲得から契約後の継続支援までの一連の営業プロセスを、マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスという4つの機能に分業し、各部門が連携しながら収益(レベニュー)を最大化する営業プロセスのモデルを指します。単なる組織図ではなく、各フェーズの成果を数値で可視化し、部門間で受け渡していく「プロセス設計の考え方」だと捉えると理解しやすいでしょう。「the model型営業」「the model型組織」「the model型の分業体制」などと呼ばれることもありますが、いずれも同じ考え方を指しています。

この概念が日本で広く知られるようになった大きなきっかけが、福田康隆氏の著書『THE MODEL(ザ・モデル)マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス』(翔泳社/MarkeZine BOOKS、2019年1月30日発行)です。同書は発売後にセールス・マーケティングの新しい教科書として支持を集め、10万部を超えるロングセラーとなりました。

著者の福田氏は、日本オラクルからオラクル米国本社を経て、2004年にセールスフォース・ドットコムに参画し、日本市場のオペレーションを担ってきた人物です。The Modelという営業プロセスは、もともと米国セールスフォース・ドットコムが実践していた仕組みに根ざしており、福田氏がその原型と考え方を日本の読者向けに体系立てて紹介したことで一気に浸透しました。「The Model=セールスフォースが実践してきた分業型の営業プロセスを言語化したもの」と理解しておくとよいでしょう。

なお、書籍のサブタイトルが示す通り、福田氏自身は単純な「分業」ではなく各部門が協力し合う「共業」という言葉を使っています。この点は、後述するデメリットや成功のポイントを考えるうえで重要な視点になります。

なぜThe Modelが注目されているのか

The Modelがこれほど注目される背景には、顧客の購買行動の大きな変化があります。インターネットやスマートフォンの普及により、顧客は営業担当者に会う前に自ら情報を集め、比較検討を進めるようになりました。書籍『THE MODEL』でもよく引用されるように「顧客の購買プロセスの半分以上は、営業担当者と接触する前に完了している」とも言われます。

こうした環境では、従来のように1人の営業担当者が「見込み客の発掘から商談、受注、その後のフォローまで」をすべて抱える属人的なスタイルでは、機会損失が起こりやすくなります。BtoBの購買は関与者が多く、検討期間も長期化する傾向があり、営業活動そのものが複雑化しているためです。認知・情報提供・比較検討といった購買の前半段階を、マーケティングやインサイドセールスといった専門機能で支える必要が出てきました。

さらに、月額課金で継続利用を前提とするSaaS(サブスクリプション型)ビジネスの拡大も追い風になりました。売って終わりではなく、契約後に顧客が製品を使いこなし、継続・拡大してもらうことが収益の柱になるため、獲得から活用支援までを一気通貫で設計するThe Modelの考え方と非常に相性が良かったのです。加えて、特定のエース営業に売上が依存する「属人化」から脱し、誰が担当しても一定の成果が出せる再現性のある組織を築ける点も、幅広い企業に受け入れられた理由です。

The Modelの仕組み:4つの部門と役割分担

The Modelの中核は、営業プロセスを4つの機能(フェーズ)に分け、それぞれに責任範囲とKPIを設定する点にあります。各部門は独立して動くのではなく、前の部門の成果(アウトプット)が次の部門の起点(インプット)になる「バトンリレー」のような構造です。ある部門のゴール数値が次の部門の起点数値になるため、リード数・商談化率・受注率・継続率といった数字がすべて連動し、売上(レベニュー)まで一本の流れでつながります。全体像を整理すると次のようになります。

フェーズ 主な役割 代表的なKPIの例 主に使うツール
マーケティング リード(見込み客)の獲得・創出 リード獲得数、MQL数、CPA、CV率 MA(マーケティングオートメーション)
インサイドセールス 見込み客の育成・案件化 有効商談化数(SQL)、アポイント数 MA/SFA
フィールドセールス 商談・提案・受注(クロージング) 受注数、受注率、平均単価 SFA/CRM
カスタマーサクセス 活用支援・契約継続・アップセル 継続率(更新率)、解約率、LTV CRM

それぞれの部門を詳しく見ていきましょう。

マーケティング:リード獲得

マーケティングは、The Modelの起点となる部門です。展示会やセミナー、Web広告、SEO・コンテンツマーケティング、メルマガなど多様な施策を通じて潜在顧客との接点をつくり、見込み客(リード)を獲得します。まだ情報収集の初期段階にいる顧客に対して、有益な情報を届けながら自社への関心を高めていくことが求められます。

ここで重要なのは、単に「リード数」を増やすことがゴールではないという点です。次のインサイドセールスがアプローチしやすい「質の高いリード」をいかに供給できるかが、後工程全体の成果を左右します。獲得したリードは、行動履歴や属性に応じてスコアリングし、購買意欲が高まった見込み客(MQL:Marketing Qualified Lead)としてインサイドセールスへ引き渡します。

インサイドセールス:見込み客の育成と案件化

インサイドセールス(内勤営業)は、マーケティングが獲得したリードに対して、電話・メール・オンライン商談などの非対面手段でアプローチし、見込み客を育成(ナーチャリング)しながら案件化する部門です。まだ購買意欲が固まっていない顧客との関係を築き、課題・導入時期・予算・意思決定体制などを丁寧にヒアリングして、確度が高まったタイミングで商談としてフィールドセールスへ橋渡しします。

商談化に足ると判断されたリードは「SQL(Sales Qualified Lead)」となり、フィールドセールスへ引き継がれます。The Modelにおいてインサイドセールスは、マーケティングとフィールドセールスをつなぐ要の役割を担います。ここで「商談化数」という量だけを追ってしまうと、確度の低いアポイントを量産し、後工程の受注率を下げてしまうため、量と質のバランスを意識した運用が欠かせません。

フィールドセールス:商談・受注

フィールドセールス(外勤営業)は、インサイドセールスから引き継いだ確度の高い商談に対して、訪問やオンラインで具体的な提案を行い、クロージング(受注)まで担当する部門です。顧客の課題を深く理解し、自社の製品・サービスがどのように解決に貢献するかを提示し、条件面の調整を経て契約へと導きます。

前工程で顧客の温度感やニーズが整理されているため、フィールドセールスは受注確度の高い商談に集中でき、1件あたりの提案の質を高めやすくなります。従来型の営業では発掘から受注まで1人で担っていた業務のうち、フィールドセールスは「商談・受注」という最も専門性が問われる領域に注力できる点が特徴です。

カスタマーサクセス:契約継続とアップセル

カスタマーサクセスは、契約後の顧客が製品・サービスを最大限に活用し、成果を実感できるよう能動的に支援する部門です。導入支援やトレーニング、活用状況のモニタリング、課題への提案などを通じて顧客の成功を後押しし、契約の継続(更新)につなげます。さらに、新たな課題に対して上位プランや追加機能を提案するアップセル・クロスセルも担います。

サブスクリプション型ビジネスでは、契約継続やアップセルが収益の大きな柱になります。解約(チャーン)を防ぎ、LTV(顧客生涯価値)を高めるカスタマーサクセスは、The Modelを「売って終わり」で終わらせず、継続的な収益を生み出すループへと変える重要な役割を果たします。満足した既存顧客が新たな見込み客を紹介するなど、マーケティングの起点に還流していく循環も期待できます。

The Model導入のメリット

The Modelを取り入れることで、営業組織にはさまざまなメリットが生まれます。主なものを整理します。

1. 営業効率の向上と業務への集中 各担当者が自分の専門フェーズに集中できるため、1人であらゆる業務を抱える属人的な営業に比べて生産性が高まります。フィールドセールスは商談に、インサイドセールスは案件発掘にと役割が明確になり、無駄な工数を削減できます。

2. プロセスの可視化と課題発見 プロセスを4段階に分け、各部門にKPIを設定することで、どのフェーズがボトルネックになっているかが数値で把握できます。「リードは十分あるのに商談化率が低い」「商談は多いのに受注率が低い」といった課題を早期に発見し、ピンポイントで改善のPDCAを回せるのは大きな利点です。

3. 再現性のある組織運営 成果が個人のスキルや経験に依存しにくくなり、勝ちパターンを仕組みとして共有しやすくなります。新任担当者の育成もフェーズ単位で行えるため、組織全体でスケール(拡大)させやすくなります。

4. 顧客体験の一貫性と収益の最大化 獲得から活用支援までを設計思想として一本化することで、顧客に段階に応じた最適な関わり方ができます。結果として顧客満足度が高まり、継続・拡大による収益の最大化につながります。

The Model導入の注意点・デメリット

一方で、The Modelは「分業すれば自動的にうまくいく」ものではありません。むしろ、形だけ真似ると逆効果になるリスクがあり、実際に「導入したがうまく機能しない」という声も多く聞かれます。代表的な注意点を挙げます。

部門間の連携不足(サイロ化) 最も起こりやすいのが、各部門が自部門のKPIだけを追い求め、隣の部門に無関心になる「サイロ化(分断)」です。たとえばインサイドセールスが「商談化数」だけを追って質の低いアポを量産すると、フィールドセールスの受注率が下がる、といった全体最適を損なう事態が生じます。部門ごとに評価軸がずれると、連携そのものが機能しなくなります。

引き継ぎ(ハンドオフ)の分断 分業したことで、フェーズの「境目」で情報が抜け落ち、責任が曖昧になり、顧客体験が断絶するケースもあります。マーケティングがスコアリングして引き渡しても「スコアの割に関心度が高くなかった」といったズレが頻発すると、部門間に不信感が生まれます。顧客から見ても「同じ説明を何度もさせられる」と感じれば、満足度は下がります。

部門間の対立構造 戦略が十分に設計されないまま分業だけを進めると、「マーケはリード数、セールスは受注率」というように成果の見方が食い違い、責任のなすり合いが起きがちです。顧客から見ても部門ごとに言うことが違えば、企業への信頼が揺らぎます。前述の通り、福田氏が「分業」ではなく「共業」という言葉を選んだのは、まさにこの落とし穴を避けるためだと考えられます。

こうしたデメリットの多くは、部門を分けること自体ではなく、部門間の「つなぎ」の設計不足から生じます。The Modelを導入する際は、分業のメリットと同時に、この分断リスクを前提に運用を組み立てることが欠かせません。

The Modelを成功させる運用のポイント

デメリットを踏まえたうえで、The Modelを機能させるための実践的なポイントを整理します。

1. 各部門の責任範囲とKPIを数値で設計する まず、各フェーズの担当範囲と「どこからどこまでを誰が持つのか」を明確にします。The Modelでは、ある部門のゴール数値が次の部門の起点数値になるため、すべての数字が連動しています。だからこそKPIは「成果の測定」だけでなく「改善の出発点」として設計し、各部門が全体ではなく自部門の指標に責任を持つ形にすることが重要です。

2. 引き渡し条件(SLA)とMQL・SQLの定義を明文化する 部門間の分断を防ぐ最大の鍵が、フェーズ間の引き渡し条件を取り決めることです。「どのような状態になったらMQLとしてインサイドセールスに渡すのか」「どんな条件を満たせばSQLとしてフィールドセールスに渡すのか」を、関係部門が合意した基準(SLA:Service Level Agreement)として明文化します。これにより「質の低いリードが流れてくる」といった摩擦を減らし、共業を実現できます。

3. SFA/MA/CRMを活用してデータを一元化する The Modelはデータドリブンな運用が前提です。マーケティングはMA、営業活動はSFA、顧客管理はCRMといったツールを連携させ、リードから受注・継続までの情報を一元管理します。データ定義を部門間で統一しておくことで、各フェーズの数値を正しく比較・分析でき、予測精度の向上にもつながります。後工程が前工程の顧客理解を引き継げるため、一貫した対応が可能になります。

4. 全体最適の視点を共有する仕組みをつくる KPIの連動を「自部門さえよければいい」に陥らせないため、定期的に部門横断で数値を振り返る場を設け、最終ゴール(収益・LTV)を全員で共有します。「定義する→SLAを設定する→ツールに実装する→月次で振り返る」という改善サイクルを継続することが、分業を分断に終わらせず、真の共業へと育てる方法です。各部門が同じゴールを見て動く文化づくりが、The Modelを本当に機能させる土台になります。

このように、The Modelの成功は「分けること」以上に「つなぐこと」にかかっています。KPI設計、SLAの明文化、ツール活用、そして全体最適の文化——この4点を丁寧に整えることが、絵に描いた餅にしないための現実的な処方箋です。

まとめ

The Model(ザ・モデル)とは、マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスの4部門で営業プロセスを分業し、各フェーズを数値で可視化しながら連携して収益を最大化する営業プロセスのモデルです。セールスフォース・ドットコムの実践に根ざし、福田康隆氏の著書『THE MODEL』(2019年)を通じて日本のBtoB業界に広く浸透しました。

導入すれば営業効率の向上、プロセスの可視化、再現性のある組織運営といった多くのメリットが得られる一方、サイロ化や引き継ぎの分断、部門間の対立といったデメリットも表裏一体で存在します。成否を分けるのは、KPIの数値設計、引き渡し条件(SLA)やMQL・SQLの定義の明文化、SFA/MA/CRMの活用、そして全体最適を共有する文化づくりです。The Modelは「分業」ではなく「共業」——各部門がひとつのゴールに向かって手を取り合う仕組みだと捉えることが、成功への第一歩になります。

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